手織ラグの店クラフトワーク
ギャッベは、すべて自然の素材からつくられます。
かつてはヤギやラクダの毛が混ぜられることもありましたが、現在のギャッベでは、毛足に羊毛(ウール)、縦糸には羊毛かコットン糸が使われています。遊牧生活に寄り添うこれらの素材は、自然との共生そのものであり、過酷な環境の中で培われてきた知恵の結晶です。
毛足に使われる羊毛は、遊牧生活を共にする羊たちから得られます。
春から夏へと向かう陽気の中、羊たちは川で丸ごと洗われ、太陽の下で毛を刈られます。その羊毛は柔らかくしなやかでありながら、耐久性に富み、厚いパイルのギャッベを織り上げるのに欠かせません。自然の恵みをいただき、日々の暮らしを支える道具へと変えていく過程そのものが、遊牧民の生活のリズムと結びついています。
ギャッベに使われる羊毛は、すべてが同じではありません。
遊牧民が放牧する羊は、標高の高いザグロス山脈の気候に鍛えられ、毛には弾力と耐久性が宿ります。特に背中や肩の毛は柔らかくしなやかで、ギャッベのパイルに適した上質な部分とされています。一方で、腹や脚の毛はやや粗く、別の織物や日用品に回されることもありました。
部族ごとにも違いが見られます。ファルス州のカシュガイ族は、染色に映える白毛の羊を重んじ、鮮やかな赤や黄に染め上げて自由な文様を織り込みました。ロリ族の羊毛は厚みがあり、素朴で力強い質感が特徴です。こうした違いは、地域の自然環境や生活様式の反映でもあり、ギャッベの多彩な表情を生み出しています。
ギャッベを彩る鮮やかな色も、自然からの贈り物です。
赤はアカネの根、黄色はザクロの皮やウコン、青は藍の葉から生まれます。黒や茶はクルミの殻や樹皮で染め上げられました。遊牧民は身近にある草木や果実を工夫して染料とし、陽の光や水とともに時間をかけて色を定着させました。そのためギャッベの色は人工的な均一さを持たず、自然と同じように豊かな揺らぎを含みます。年月を経るごとに色は落ち着きを増し、まるで大地そのもののように深みを帯びてゆくのです。
縦糸はギャッベの土台を成し、上下の端からフサとなって姿を見せます。
多くは色の濃い羊毛を強く撚りあげた糸が使われますが、地域によっては細くて丈夫なコットン糸も用いられます。時には白と黒の縦糸が入り混じることもあり、遊牧民がその時手に入る素材を工夫して織りあげる、ギャッベ本来の大らかさを垣間見せます。
ギャッベに使われる羊毛や糸は、単なる材料ではなく、遊牧民の暮らしそのものを映し出すものです。羊の群れを守り、家族とともに移動し、自然からの恵みをそのまま生かして織り上げられた一枚には、土地と人々の物語が込められています。
自然素材のあたたかみは、時を経ても色あせることなく、触れる人の心にぬくもりを伝え続けます。