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ギャッベの歴史

織りあげられた物語

ヤギや女の子を織り込んだ青と黄色のギャッベ

ギャッベとは、イラン南西部のファルス地方で生活を営む遊牧民によって昔から織り続けられている絨毯です。女性たちがたしなみとして身につける技術で織り、その生活の中で使うという素朴な絨毯で、堅い地面に敷くために非常に丈夫で分厚く、移動の間に手早く織るために太い糸でざっくりと織られています。素材はウール、ヤギの毛、ラクダの毛などで、色は草木染という100%自然素材で出来た絨毯です。

ギャッベを特別なものとしているのは、何といってもそのアート性の高いモチーフと深く美しい色彩です。ギャッベには下絵も何もなく、織り手が心に思うがまま即興で織りあげていきます。その題材は遊牧生活の舞台である美しい自然、織り手の毎日の生活や身近に起こった出来事などであり、ときにはその願望をギャッベに託して表現することもあります。織り手の人となりや世界観を垣間見せるギャッベはまさに絵画の性格を持つものであり、同じギャッベは世界にふたつとありません。

映画「ギャベ」の監督、モフセン・マフマルバフ氏は言っています。「ギャッベを見ていると心が安らいでくる。まるで子供の絵のようだ。・・・羊飼いが刈り取るごく普通の羊毛、少女が砂漠から摘んでくるどこにでもある草花の色、そして織り手のインスピレーション、それがギャッベだ。イランの民族がその土地にあるものを使って作り、自然の中にあるものを自然の中で使うにすぎない。ギャッベは真に、遊牧民の絨毯である。一言でいうならば、私はギャッベを愛している。

ギャッベはデザインも特徴も、典型的なペルシャ絨毯とはあらゆる面で異なります。1970年前後に「再発見」されたギャッベの鮮やかな魅力はアメリカやヨーロッパで紹介され、今や世界中で引く手あまたとなりました。一方、近代生活の影響の中で昔ながらの遊牧生活を続ける遊牧民は年々減っていますが、ギャッベ絨毯の伝統は民族の財産として脈々と受け継がれ、現在も昔と同じ方法で織り続けられています。

ギャッベを織る遊牧民

ギャッベを織り始めたのは、イランのファルス地方に住むルリ族やカシュガイ族などの遊牧民です。ファルス地方の遊牧民の暮らしとは、ヤギや羊を育て飼い、その餌となる緑を求めて砂漠とザクロス山脈の山の上とを家財道具のテントを運んで行ったり来たりしながら生活するというもの。そんな彼らにとって一番大事な財産とは、生活をさせてくれるヤギや羊、そしてその毛から織りあげるキリムや絨毯なのです。
ギャッベを作るのは、家族総出の仕事です。男たちがヒツジの毛を刈り、川で洗い清め、次に女たちがその毛を手でやわらかくつむいでいく。つむぎ終わった糸を、今度はザクロやブドウ、ロナスの葉を使って男たちが染めあげ、母親から教わりながら娘たちが織りあげます。織りあがったギャッベを男たちが洗い干しあげると、なんとあざやかなこと・・・!

娘たちは、結婚する際にキリムと同じくギャッベを織りあげ、婚家へ持っていくのが慣わしとなっています。遊牧民の社会の結婚とは、二つの親族を結びつける大切なもの。この花嫁の織りあげるギャッベにはその娘のみならず、家族の評価がかかってくるというからさあ大変です。普段はなんだか大雑把な織り方をする娘もこのときばかりは一生懸命、繊細なギャッベを織ったりするといいますから、その心うちが推し量られてなんとも面白いものです。


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