ギャッベとは、イラン南部の遊牧民が織る分厚く毛足の長い絨毯のこと。自由に織られる個性豊かな色モチーフが現代のインテリアによく調和し、自然素材の心地よさ、普段使いに向く丈夫さから世界中で愛されるようになりました。
クラフトワークでは、イラン・カシュガイ族のギャッベを買い付けています。昔からの方法で織り続けられているギャッベは、素朴さと共に強い魅力を秘めています。
ギャッベというのは、イランの遊牧民が昔から自分たちの家財道具として織って使い続けてきた、分厚く丈夫な絨毯の名前です。伝統的なペルシャ絨毯の一種ですが、子供の絵のように自由で鮮やかな色模様、ざっくりとした織りに例外的な毛足の長さという一目でわかる強い特徴のために、現地の遊牧民による「ギャッベ(ギャベ)」という呼び名で区別されています。
原初のギャッベは、羊の毛色そのままの色も模様もない素朴な絨毯でした。砂漠のテントの硬く冷たい夜を心地よく過ごすめに織りあげられた絨毯は、カシュガイ族の優れた染色技法と色彩感覚に育て上げられ、いつしか絵のように美しい色模様を織りなすようになりました。
近年になって、ギャッベはイランはもとより世界中で好んで使われるようになりました。他のペルシャ絨毯と表情の異なる自由で軽やかなデザインがモダンなインテリアによく似合うこと、色模様の美しさがその大きな理由の一つですが、ギャッベには使い手を虜にする魅力があるのです。
砂漠で織られるギャッベは遊牧民の育てる羊の毛を草木染めで染色し、糸に紡いで織りあげます。ときに不ぞろいな毛足は素朴な温かみを伝えつつ、使うほどによく馴染んでやわらかな手触りに育ちます。日本ではウールは冬のイメージがありますが、呼吸をするため夏でもべたつかず、一年中さらりと快適に使えます。
地面に直接敷き、川で洗って使われてきたギャッベは多少のことでは傷みません。汚れれば水拭きが出来ますし、厚い毛足は踏まれるほど落ち着きます。気兼ねのいらない普段使いの絨毯として存分に活躍しながら、長く使っても古びることなくより味わいを増していきます。
ギャッベの特徴である長い毛足は、どっしりとした落ち着きとやわらかなクッションを生みます。個体差はありますが、その多くは気持ちのいい弾力があり、お座布団にもお昼寝マットにもなるのです。衝撃を吸収するので防音マットとしても利用され、通気性があり熱にも強いため、床暖房や暖炉とも相性が良いのです。
下絵のないギャッベは、織り手の心が向くままに色もモチーフも自由に織りあげられてゆきます。その豊かな創造性はもとより、目運びそのものにも織り手の性格が現れるのがギャッベの面白いところ。染色や毛足の質、それぞれ異なる厚みも含めて全く同じものは二つとないギャッベはすべて一期一会の出会いなのです。
自然素材で織られるギャッベの美しい色と模様の秘密について。
羊の毛刈りに、家族総出の糸紡ぎ。草木染めに素朴な織りあがり、仕入れの風景も。
クラフトワークでは、家庭で織られる昔ながらのギャッベを買い付けています。
世界中の需要や要求を満たすため、規格化され、受注生産されるギャッベが増える中、ギャッベ本来の自由で素朴な風合いは次第に薄くなってきました。
遊牧民から直接仕入れるギャッベは大きさもまちまちで、あまり洗練されていない代わりに個々の美しい創造性、あたたかさ、そして力強さが生きています。
このような家庭織りのギャッベも年々減ってきましたが、手に入る限りは彼らのギャッベを買い続けたいと思っています。
テント生活で使われるギャッベは本当に丈夫です。どうぞ気兼ねなくお使いください。普段のお手入れは掃除機で十分きれいになります。また、必要とあらば水洗いも可能です。
→ギャッベのお手入れ方法について
ウール100%の手織絨毯の特質として、ギャッベの多くは使い始めにふわふわとした細かい毛(遊び毛)が出てきます。一度にたくさん出ることもありますがギャッベ本体に悪影響はなく、使い込むうちに次第におさまります。それぞれのギャッベで遊び毛の状態は異なりますので気になる場合はお問合せ下さい。
ギャッベのボンボンは付け外しが可能です。(無料)ご希望の方はご注文の際にお伝えください。
弊店でお求め頂いたギャッベ絨毯は補修が可能です。お気軽にお問合せ下さい。(実店舗:052-763-2656)
ギャッベとは、イラン南西部のファルス地方で生活を営む遊牧民によって昔から織り続けられている絨毯です。女性たちがたしなみとして身につける技術で織り、その生活の中で使うという素朴な絨毯で、堅い地面に敷くために非常に丈夫で分厚く、移動の間に手早く織るために太い糸でざっくりと織られています。素材はウール、ヤギの毛、ラクダの毛などで、色は草木染という100%自然素材で出来た絨毯です。
ギャッベを特別なものとしているのは、何といってもそのアート性の高いモチーフと深く美しい色彩です。ギャッベには下絵も何もなく、織り手が心に思うがまま即興で織りあげていきます。その題材は遊牧生活の舞台である美しい自然、織り手の毎日の生活や身近に起こった出来事などであり、ときにはその願望をギャッベに託して表現することもあります。織り手の人となりや世界観を垣間見せるギャッベはまさに絵画の性格を持つものであり、同じギャッベは世界にふたつとありません。
映画「ギャベ」の監督、モフセン・マフマルバフ氏は言っています。「ギャッベを見ていると心が安らいでくる。まるで子供の絵のようだ。・・・羊飼いが刈り取るごく普通の羊毛、少女が砂漠から摘んでくるどこにでもある草花の色、そして織り手のインスピレーション、それがギャッベだ。イランの民族がその土地にあるものを使って作り、自然の中にあるものを自然の中で使うにすぎない。ギャッベは真に、遊牧民の絨毯である。一言でいうならば、私はギャッベを愛している。
イラン国内で近年ようやく注目されるようになってきたギャッベは、ヨーロッパでの関心や紹介を経て、今や世界中で引く手あまたとなりました。一方、近代生活の影響の中で昔ながらの遊牧生活を続ける遊牧民は年々減っていますが、ギャッベ絨毯の伝統は民族の財産として脈々と受け継がれ、現在も昔と同じ方法で織り続けられています。
ギャッベを織り始めたのは、イランのファルス地方に住むルリ族やカシュガイ族などの遊牧民です。ファルス地方の遊牧民の暮らしとは、ヤギや羊を育て飼い、その餌となる緑を求めて砂漠と座クロス山脈の山の上とを家財道具のテントを運んで行ったり来たりしながら生活するというもの。そんな彼らにとって一番大事な財産とは、生活をさせてくれるヤギや羊、そしてその毛から織りあげるキリムや絨毯なのです。
ギャッベを作るのは、家族総出の仕事です。男たちがヒツジの毛を刈り、川で洗い清め、次に女たちがその毛を手でやわらかくつむいでいく。つむぎ終わった糸を、今度はザクロやブドウ、ロナスの葉を使って男たちが染めあげ、母親から教わりながら娘たちが織りあげます。織りあがったギャッベを男たちが洗い干しあげると、なんとあざやかなこと・・・!
娘たちは、結婚する際にキリムと同じくギャッベを織りあげ、婚家へ持っていくのが慣わしとなっています。遊牧民の社会の結婚とは、二つの親族を結びつける大切なもの。この花嫁の織りあげるギャッベにはその娘のみならず、家族の評価がかかってくるというからさあ大変です。普段はなんだか大雑把な織り方をする娘もこのときばかりは一生懸命、繊細なギャッベを織ったりするといいますから、その心うちが推し量られてなんとも面白いものです。
原初のギャッベは染色されず、動物の毛の色そのままに織られていました。遊牧生活の旅の中、いろいろな部族と出会い交流するうちに「色」と出会い、染色技法を高め、現在の鮮やかで美しい草木染の絨毯になったといいます。
ギャッベの糸は天然染料で染められています。素材はざくろやサフラン、ブドウの葉などそれぞれの季節の自然に豊富に見られる植物で、深く味わいのある、それでいて非常に鮮やかな発色を特徴としています。
「アブラッシュ」というのは草木染特有の色村のことを差すのですが、この色村こそギャッベ絨毯の美しさの頂点と言えます。水の揺蕩う青のグラデーション、赤一色の夕日のギャッベの目を奪われる深み、そして草原をそのまま写し取る緑。大自然の恵みを人の手で昇華し、凝縮させたもの、それがギャッベの色なのです。
ギャッベの色として最も愛されるのは赤、黄色、そして青に緑。それぞれの色には意味がこめられ、それを知って眺めるギャッベはまた違う面白さを含みます。
例えば、黄色。黄色はイランの砂漠の色です。砂漠は遊牧民の生活の場、彼らの故郷そのものです。砂漠が干上がり、羊たちの餌を求めて緑多いザクロス山中で夏を過ごすとき、黄色いギャッベが織られることが多いといいます。故郷の砂漠に思いをはせる、懐かしい、少し切ない気持ちがギャッベの黄色に託されています。
そして、緑。緑は草木の色、水があり、ヒツジの食べる草がある、生命にあふれた土地を示しています。乾いた砂漠から山に向かうとき、凍てついた山から故郷の砂漠に戻るとき、緑が少しずつ顔を出し、広がってくるにつれて旅の一団もわくわくと活気を帯びてくるのです。
青は空の色、純粋な水の色、そして荘厳さ。夜空を切り取ったような星空のギャッベ、または風のない青い砂漠の空を眺めるときの、心の洗われる感覚・・・そのには青というけがれない色の持つ、洗い清める力がひそんでいます。
赤のギャッベは、見る人にエネルギーを与えます。健康な子供の、血行のいいほっぺの色を表す赤は見る人に、みなぎる元気や躍動感をもたらします。うれしいことがあったときの気持ち、わくわくとした楽しい気持ちが赤いギャッベに織り込められています。
ギャッベには下絵がありません。町で織られる絨毯の多くが下絵に忠実に織りあげられていくのに対し、ギャッベを始めとする遊牧民の絨毯は下絵も図面もなく、こころに思うがままに織られてゆきます。
ギャッベはそもそも、遊牧民が自分の生活のため、テントに敷いて横になったり座るために織り始められたもので、他者の目に触れることは考えられていませんでした。そのため、そのモチーフはきわめてプライベートなものであり、その織り主の心の中を表すいわば、「織りあげられた日記」のようなものとなったのです。
例えば「テント」。テントのモチーフはあるときは「強くて大きなテントが欲しいな!」という願望をあらわし、またある時は家庭、すなわち結婚への思いをあらわします。あるいは最近起こった心に残る出来事を絵にあらわしたり、また家族への要望を言葉に出さずにギャッベに織り込んで伝えることもあるそうです。
モチーフの多くは織り手にとって大切なものであり、生活の中で重要な意味を持つものであるため、その人がどんな世界観を持っているのか、どんな人柄であるのかが端的に現れます。目の細かさ、大雑把さなどその織り方も含めて、ギャッベを見るとその人となりや最近の出来事が推測されるというわけです。
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