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キリムの色

美しい草木染め

1850年に化学染料が発明されるまではキリムの染色は完全に自然材料によって行わていました。化学染料のなかった時代、町や村には専門の染色業者がいたり、またマーケットで草木染の糸を買うこともできたそうです。自給自足の遊牧民の世界ではつい最近まで、草木染のみで染色が行われていました。 遊牧民の女性たちはヒツジが草を食む牧草の間、テントの周りの土地からハーブや花や根っこを集め、自分たちの特別な染色レシピで糸を美しく染めました。移動生活では少しの糸しか運べないので、一度に一束ずつ染めてはキリムを織っていたそうです。古いキリムに見られる微妙な色の変化には、こんな事情もあったのです。

こうして染められた自然染色の色は時間とともに褪せてゆき、最後には茶色のバリエーションに変化します。長く使われ、何度も洗われてひなびた色になったキリムは、なんとも味わい深く魅力のあるものです。

鮮やかな化学染料

19世紀中ごろ以降にはキリムにも草木染とあわせて、化学染料が使われるようになりました。草木染で表現しにくい色も容易に染色でき、また鮮やかな色彩が好まれて大いに重宝されたこの化学染料ですが、草木染とくらべるとやや色がきつく、織りあがりの色調は自然素材によるやわらかな美しさとは異なります。

ただ面白いことに、この化学染料の色彩は時がたち、褪せるとともに不思議な魅力を生み出します。現在残っているオールドキリムの多くは草木染めと化学染料を併用して織りあげられたものですが、渋い色彩にちらりと混ざる鮮やかなオレンジ、自然染料にインクを混ぜた色彩の思いがけない変化が、趣きを増したオールドキリムをより深く、面白味のある表情に育てています。

草木染めリバイバル

最近になって草木染の価値は再認識され、再び伝統的な染色方法で染められることも多くなりました。特にイランでは、自分達の生活だけに織る遊牧民が未だ多く存在するために草木染の伝統が良く保たれており、テントの隣で紡いだ羊毛を大鍋で煮込みながら鮮やかに染める景色も見られます。


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