なめらかに移りゆく空の色は次第に濃く深く、でも沈まない鮮やかな青みを揺蕩えています。けぶるようにほの白いブルーグレーは緑を含んで遥かな海を思わせ、さらりと落ち着いた藍は艶やかな夜に続きます。
変化してゆく景色の境界は糸色だけではそれとわからないほど繊細にぼかされながら、そこには小さな植物の並木や連なるラクダの隊商が描かれて、くっきりと場面が分かたれています。可憐に枝を広げる花のような植物は昼と夜の青の中で淡く、また鮮やかに照らされて、幻想的な彩りを並べています。
どの糸もしっとりとよく含んだ色みにふわりとやわらかな白さが混ざり、パステル調のマットな発色には羊毛に由来する濁りが豊かな奥行きを与えています。淡い染めむらが描く静かな流れは光の加減でなめらかな毛艶と共鳴し、見る角度で軽やかな透明感をたたえます。
濃くたっぷりと織り詰められた毛足は長く豊かに刈り込まれ、ファイン・ギャッベとしては驚く程分厚い毛並みを誇っています。

■ファイン・ギャッベについて

細かなモチーフに、つやの良いなめらかな毛並み。ふかふかとした厚みが身上の通常のギャッベに比べ、見た目も質感も繊細なこの種のギャッベは、いわゆる「ファイン・ギャッベ（リーズバフ）」と呼ばれるものです。
ファイン・ギャッベには細く上質なウールが使用され、織りの密度は通常のギャッベの4〜5倍以上と細かく、ペルシャ絨毯に近いものです。通常のギャッベでは1つの織り目に2本の糸を織り込むのに対し、1つの目に対し１本の糸を縛るためより細かな仕上がりとなり、手間もかかるため仕入価格も3倍程度となっています。日本では販売会社によって名前のつけられたものをよく見かけますが、現地の仕入の時点では単に「細かい織り（リーズバフ）」と呼ばれます。
毛の一本一本が目立たない均一な表面はするりとなめらかで、細かなモチーフがきれいに浮かび上がります。モチーフの輪郭を美しく出すために多くは薄めに刈り込まれますが、毛足が密なので歩くとやわらかな弾力があり、軽やかな見た目からは思いがけないほど重く、床に吸い付くように収まります。全体の質感はしなやかで、薄手のものはくにゃりと折りたためるほどです。薄いものはもとより厚手のタイプでも遊び毛は非常に少なく、使い始めからほとんど気になりません。ギャッベの豊かな色彩と自由なモチーフ、ペルシャ絨毯の繊細さと上質さという、両方の特徴を併せ持った絨毯です。