入り混ざる褐色の羊毛色はこげ茶やベージュのすじを濃く淡く浮かべ、ふわりとした茶グレーが風に乗って流れるようです。春を夢見るピンクに緑、月夜の藍にレモンの黄色となんとも甘やかな染め糸はそれぞれに響きを楽しむように２色ずつ組まれ、星と花に満ちた植物の景色を並べています。
ほの淡くまろやかな色彩は濃い淡い色むらのすじを浮かべ、枠模様と同じ流れに揺れています。濃くマットな藍が艶やかなアクセントを散りばめるなか淡い糸色は羊毛色を透かして渋みをたたえ、軽やかにも含みのある趣を感じます。
細い輪郭を描ける細かな織り目と細めの毛足を用いながらモチーフは時にあえて大きくぽっそりと織り出され、色や大きさを気まぐれに変える一面のダイヤ模様が視界の中で複雑に溶け合い、不思議に美しい、きらめくような表情を広げます。ます模様のうちひとつだけは淡い花のみで植物がなく、忘れたのか遊び心か、織り手の意図が推し量られます。