甘く実った赤ブドウを氷に溶かして薄めたような、芳醇にも軽くまろやかなあずき色。赤と呼ぶにはより深く、ワイン色とするには黄色みの残る穏やかな色彩はえんじの絵具に水を含ませ、さらりと筆で伸ばしたようです。
点描と方形、植物とダイヤ模様を次々に展開させる枠模様は、豊かな木立や花畑の遠景を楽園の回廊のように描きながら、染め糸のちらちらとした色むらをモチーフとともにきらめかせています。
なめらかな地色は光の加減でときに赤みと朗らかさを増し、ときにより静かなつや消しのえんじを広げながら、右下の白いヤギはぽっつりと明るい輪郭を浮かべています。