艶やかに濃い藍におぼろに棚引く薄緑。吸い込まれそうな夜の深さを秘めた色彩は次の瞬間には淡い光の霧に満たされ、月夜の静かな海原を想起させます。
藍と呼ぶにはほの黄色く、青緑とするには涼しさが勝つ糸色はしっとりと染みた藍にまろやかな緑のグラデーションを重ね、ほの淡い染めむらがちらちらと混ざり合う糸が、黄緑にきらめく光の帯を浮かべています。
ほの白く光を照り返す毛足の幻想的な艶めきに包まれた色彩は青に緑に揺らめいて捉えがたく、茶と朱の2色で織り込まれた4頭のヤギが、これも不思議な錯覚のようにも思われます。
一本ずつのまとまりを残した毛足はほっこりと詰んで斜め上に立ち上がり、重なり合いながら落ち着いた毛並みをたたえています。