爽やかな空色と共に浮かび上がる、濃くはっきりとした線。細かく組まれたひし形は花を描いて揺らめきながらも、枠模様から突き出る三角のぎざぎざや太く迷いのないタッチは華やかさよりも雄々しさ、繊細さよりも潔さが際立って見えます。
イラン南西部、ザクロス山脈の周辺に住むバクティアリ族のキリムです。ギャッベ絨毯にも代表されるように彼らの織物の多くは堅牢さと共に、豊かで優れた色彩感覚を誇ります。
1990年代に織られたこのキリムはまだあまり踏み込まれていないごく新しい手触りと共に、染め色も織上がり当初の艶やかな濃さを残しています。白い文様を刻み出す枠模様の水色は冴え冴えとした明るさを放つとともに、中央の静かなブルーグレーにも溶け合います。濃い藍で太く描かれた内側の枠とそのひし形の文様はクレヨン画のように明快で、朗らかな表情はそのまま内部のひし形の花畑に受け継がれて行きます。
藍や水色の間で芳醇な赤みを放つえんじは文様のそこここに配されて、深緑や薄オレンジと共に華やかな艶めきを放っています。