曇りの日のやわらかな光のように、ほの渋いもやをまとう糸色。黄色みにかすかな青みを染ませるくすんだベージュは四つ角の淡い茶色に照らされ、これも静かに広がるピンクとぱらりと散らばる緑がひそやかにも甘く爽やかな、花の香りを感じさせます。
1970年代に織られたクルド族のオールドキリムです。とても丁寧に織られたもので、当初はもう少し濃かったはずの糸色は時の流れに鮮やかさを洗い落とされ、ふわりと染み出した染め色が影のように溶け合って、ため息のように淡く静かな景色を広げています。
コットンの縦糸に細いウールの横糸を使用した織り地はよく揃う小さく繊細な目運びで、曲線の多いやわらかな文様をさらりと織り上げています。花を冠するユニークな組み模様を中心に繰り返される文様は、淡いピンクに水色のメダリオン、薄茶色のコーナーと地色に合わせて少しずつ配色を変えながら、同じ景色を広げています。