かすかにグレーを感じる涼やかな青を、一面に埋め尽くすやわらかな文様。揺らめく花から羽のように伸びる葉、まといつく蔓や有機的な内部はゆるりと繰り返されながらひそやかに変化し、水生植物のしなやかな表情を漂わせます。
細い糸で織り上げられるこの薄く繊細なキリムは、イラン北西部・セネの町のクルド族によって織られるものです。独特の曲線織り技法を多用するクルド族のキリムはたおやかなモチーフの形状により古今いずれのバリエーションも一目でそれと分かるのですが、セネで織られるこの薄手のキリムはとりわけ細やかな仕上がりと揺れるような美しい見栄えがその特徴を際立たせています。
白く細いコットンのたて糸に細いウールの横糸を使用した織り地はぺらりと薄くしなやかで、二つ折りを何度か重ねて小さく折り畳めるほどです。