「スザニ」とは、刺繍仕事を意味します。ウズベキスタンをはじめとする中央アジアの布刺繍が良く知られていますが、その名前はペルシャ語の「スザン（針）の仕事」に由来します。
イランでも布に施されることの多いスザニですが、このスザニは細くやわらかな糸で織られた薄いキリムを土台としています。イラン北西部はザンジャン県の小さな町、ゲリーチで1980年代に織られたものです。30年以上昔のものですが、裏面に布を合わせてテーブルの飾りクロスとして使われていためにまったく傷みがなく、非常にきれいに残されています。
細いコットンの縦糸とやわらかなウールの横糸で織り上げた平織りは羊毛色のほの黄色いベージュを地色に、薄いピンクとブルーグレーの縞模様を織り込んでいます。地模様と垂直に刺し込んだ縦縞と枠模様で格子を作り、互い違いにあしらわれた2種のひし形の組み模様が軽やかな花を咲かせます。