うっすらと粉をふくような濃くも静かな紫に、無数の白く細い線が繊細な文様をいちめんに浮かべあげています。濃い背景色に織り出されたモチーフは入り組んだ細かな輪郭をくっきりと刻み、無数の直線を組み、繰り返すフォルムは神経質なほどの正確さでデリケートな美しさを生みだしています。
イラン東部に住むバルーチ族のキリムです。1960年前後に織られて使われていたもので、当初はもっと長く幅もあるものでしたが、傷んだ部分を除いてカットし、上下はフサを出し直し、左右は新たにかがり直してあします。
コットンの縦糸に中細のウールの横糸で織り上げられたもので、濃淡の紫にえんじ、グリーンの縞状の地色の中に、使わない色糸を裏側に渡す技法でモチーフが織り込まれています。
小さくきっちりと詰められた織り目はモチーフの細かな角までかっちりと織り出し、えんじや緑が地色と溶け合いながらゆらりとした抑揚を浮かべる中、羊毛色の穏やかなベージュがちらちらと白く可憐な明るさを重ねます。