太陽の恵みを感じる赤い大きな織り地いっぱいに、天を貫かんばかりに伸び栄える一連の「命の木」。
矢のように長くしなやかな幹は上の枠模様ぎりぎりまで勢いよく一途に樹幹をのばし、その左右にはぎざぎざと繁った枝葉が豊かで力強い生命力を広げています。それぞれの木を区切るように囲む枠模様には升目に分けられて無数のヤギが立ち並び、自然の恵みと繁栄を称え、謳歌し、祝福しているようです。
スマックキリムとは、縦糸に追加の色糸をくるくると巻きつけながら織り進め、モチーフを形作る技法で織りあげられたキリムです。一重の糸で構成される平織りに比べて非常に時間がかかり、熟練した技術を要するものですが、織りあがりは繊細で美しく、とても丈夫な仕上がりとなります。色糸が追加されるため織り地に厚みが生まれ、表面は均一でモチーフの間の隙間（スリット）はまったくありません。
このキリムはイラン北東部・ダシュテモガンの町で織られたスマックキリムです。ウールの縦糸に中細の色糸を使用し、手慣れた調子で織りあげられています。比較的ゆったりとした段組みは横糸の間に縦糸のベージュを覗かせて、ほんのりとピンクみを帯びた明るい赤の地をより軽やかな発色に仕上げています。