落ち着いた色合いに独特の横縞模様が繰り返される、カラートという小さな町で織られたキリムです。
模様の織り出し方が特徴的で、横糸の色を変えるとき糸を折り返さず、表にでない糸を裏側に渡しておく編み物のような構成になっています。裏表があるかわりにスリット（模様の間の隙間）は全くなく、しっかりと丈夫な質感です。細かな連続模様が繊細な、上品な印象のキリムです。

何色ともつかない渋みを含んだ濃色を背景に、細い縞に区切られてふわりと泳ぐ明るいベージュの連続模様。時おり青や赤茶のはっきりとしたモチーフを交えながらも全体にはちらちらと細かな色の断片を集めたような色彩は、計算され、繊細に色を混ぜ合わされたタイル壁を遠くから眺めるような、奥行きのある美しさを感じます。
見慣れたキリムとどこか印象の異なるこの不思議な色彩のカラート産キリムは、近寄ってみると横糸に、数色が寄り合わされたミックス色の糸が使用されているのが分かります。キリムに使われる糸は通常、羊毛を依って糸にしたのちに染色しますが、このミックス色の糸はそれぞれの色に染色した細い糸をさらに別の色の糸と依り合わせ、一本の中に3色を集めて独特な色彩を表現しています。（←※）