こっくりと濃い色彩を時の川にすすぎ、さらりと薄めて洗い清めたような藍とピンクのグラデーション。
流れるような濃淡の揺らめきが透明感に昇華するなかで、３つの大きなメダリオンが堂々とした存在感をたたえています。
自由で独特なモチーフがキリムのそれを思わせるこの絨毯は、1940年代にクルド族によって織られたオールド絨毯です。大切に使われたものらしく傷みや補修跡は見られず完全な形を保っているのですが、色や毛並み、全体の風合いには長い時の軌跡を感じさせます。
藍に赤、オレンジに紫を主に織り上げられた毛足は当初の強く鮮やかな面影をそこここに残しながらもやわらかに褪せ、ときにほの白く透けるほどまでに淡い希薄さを見せています。上の端には黒々とした夜の色を浮かべながら水のように濃淡を行き来する藍は羊毛のこげ茶をときに渋く浮き出し、ピンクともオレンジとも決めがたい赤は夕映えの照るような明るさを感じさせます。