花形のメダリオンを浮かべ直線の枠模様に囲まれながら、その境界がかすむほどに咲き誇る花また花。ブルーグレーにピンク、薄茶に緑の花冠や枝葉は昼の光を透かし、藍色の闇を照らしながら、今を盛りの生命力でいちめんを花霞に染めています。
イラン南東部の交易地、ケルマンで1990年代に織られたオールドペルシャ絨毯です。この特徴的な花模様の絨毯は北部の村ラバールを産地とし、とりわけ質のよい織りと、一面を埋める千花模様のエレガントな美しさからしばしばケルマンラバールの名で区別して呼ばれ、世界中で愛されています。
メダリオンから咲き出る半円状に広がる花房を中心に隙間なく埋め尽くす花々は、丸い花びら尖った花びら、ひだを広げる花びらと、とりどりの形を広げ葉もまた多種多様な色と形を誇っています。濃淡のピンク、空色、緑を中心に描き出される植物は、どのアラベスク模様よりも隙間を詰め、触れ合わんばかりに繁茂しながら、その淡い色彩により野性味は身をひそめ、軽やかな印象を見る者に与えます。また、枠やコーナー部分も含めて大輪の花は配されず、ほぼ同じサイズの可憐な花が繰り返されることにより、形よりも色彩が先に目を捉える、不思議な装飾性が生まれています。