藍とこげ茶をひっそりと黒く沈めて一面に咲き誇る夜の薔薇は、決然と区切られた三層の赤い領域の中になお薔薇の池を浮かべます。ぎざぎざと階段を描いて連なる3つのメダリオンは夜色のひし形を挟んで羊毛色のベージュを照らし、昼の白い光を背に花々は茶と緑の濃いシルエットを中心に淡いピンクやえんじの小花の優美な姿を現しています。
イラン北西部、セネの町のクルド族の絨毯です。1980年代に織られたものですが、馴染んだ毛並みになめらかな艶が生まれ、鮮やかな染め色が少し和らいだほかには特に使い込まれた様子は見られず、傷みも汚れもない良い状態を保っています。
細いコットンの縦糸に細かく織り込まれた毛足は詰んでほっこりと密集し、短くも充実した毛並みをたたえています。ぴんと腰のある繊維はふかりと先をほぐしながら張りのある手ごたえを与え、手のひらで押してみるとつんとした毛足の抵抗がふしゅりとかすかな音を立てます。