ピンクの枠模様に照らされて、内側からゆったりと咲き開いてゆく薔薇模様。一面を埋め尽くす花の格子はメダリオンを中心に糸色を順に変えながら、圧倒的な優艶さを誇っています。
イラン西部のセネの町で1960年代に織られた、クルド族の絨毯です。かつて良質な絨毯は「セネ結び」と称えられたものですが、この絨毯も詰んで堅牢な質感が織りの良さを感じさせます。
コットンのたて糸に細いウールを用いて綿密に織りあげられた毛並みは1平方センチ辺り約16目のペースでかっちりと詰められ、複雑に入り組んだモチーフの輪郭を美しく刻み出しています。
正方形に近い輪郭に組まれたモチーフは、丸みを帯びた水色のメダリオンを艶やかな赤いひし形が囲み、その外側にさらに大きな明るい六角形が展開していく様子が広がる波紋のようにも見えます。それぞれの領域には様式化された六角形の花、細かな小花と葉模様が複雑に絡み合い、配色を変えて繰り返されて優美な格子模様を描き上げています。