次々に移ろう軽やかな色模様に思い出すのは車窓よりも万華鏡よりも、回るメリーゴーランドの景色。日々の繰り返しから明るく甘やかな記憶を選び、素敵な糸色に託して織り上げた風景はうっとりと心地のいい、夢の世界を眺めるようです。
水色に草色、えんじからピンクまでのバリエーションは刻々と変わる大地と空、揺れる光の色を鮮やかに写し取り、日常の具象的なモチーフと色と形の抽象的なコントラストを朗らかに組み上げています。
それぞれの糸色はときに羊毛の褐色の流れを色濃く透けだしながら明瞭な発色を誇り、ちらちらと浮かぶ色むらにふわりと照る毛艶、陽に映えて四角く輝く羊毛色の白と相まって澄んで明るい、フルートの響きのようです。
動物に植物、子供たちのモチーフは様式に時にユニークな変化を交え、足の長いラクダや男の子がそこここで愛らしく目を惹きます。大きく梢を広げる樹木やぱっちりと冴えた色合わせが刻むリズムの影には水辺に遊ぶヤギの姿や蝶の形の指輪が混ざり、眺めるほどに自由に遊ぶ織り手の心を感じます。