まろやかな明るさをたたえる黄色の大地の上に、みな同じ方向を眺めて立つ9匹の羊たち。赤、青、そして緑の糸を交互に織り込んで描かれたモチーフは、小さな体を点描のシルエットのように浮かべています。
明るい羊毛を選んで染めた糸色は染めむらの少ないほぼ一定の色彩の中に、影のようにかすかな羊毛の色調の違いと光に照らされた一本一本の糸の陰影が、なめらかな表情の中に繊細な抑揚を浮かべています。
それぞれのまとまりをよく残した毛足はたっぷりと詰まって立ち上がり、心地のいい厚みを持ち上げています。表面を指で押すと「むにゅ」と沈んで指先を隠しますが、手のひらをあてると集合した糸の腰にしっとりと押し返されて思う程にはへこみません。