カシュガイ族とは、イラン西南部のファルス地方で現在も年に2度の大移動を繰り返しながら生活を営むトルコ系の遊牧民族です。色彩感覚に優れ、アートのような色モチーフを特徴とする分厚く毛足の長い「ギャッベ絨毯」、平織りのカラフルな「キリム」で名を知られています。カシュガイ族の部族絨毯はギャッベ絨毯よりもさらに良いウールが使用され、染めも良く、モチーフが美しいことからカシュガイ絨毯と呼ばれて高い評価を得ています。

メダリオンと大きなコーナー模様に仕切られた、香り漂うようなえんじに藍。濃淡のある地色からほのかに浮かび上がる、いちめんを埋め尽くす細かなモチーフは良く見ると木の枝や花の形を成しており、上下から細い幹をまっすぐにのばした幾本もの生命の木が、細かく優美な枝葉をかすみ草のように、織り地いっぱいに生い茂らせています。
柔らかな抑揚をたたえるちらちらとしたモチーフの一つ一つはとても細かく丁寧に形作られ、下絵なく織られているのが信じられないほど、細部まで凝ったデザインが組み込まれています。枝葉の間を良く見ると鳥や馬、星模様が隠し絵のように織りこまれ、遊牧民族ならではの自然を称え、共存する思いが伝わってくるようです。

SOLD