内側ではやわらかに赤い珊瑚色に包まれ、外側では静かな藍を囲む枠色と中央の象牙色は、陽を受けて不思議なほど眩く輝いて見えます。
イラン北西部の手工芸と絨毯の町、ザンジャンで織られた絨毯です。背景色に従って配色を変えながらフィールドを埋め尽くす文様は正面と側面、そして断面の花々をひし形の線とくるりと巻いた葉模様で絡み合わせ、とりどりの小花をあしらいながら華やかな格子のような様式を繰り返しています。
枠模様に連なる花蔓模様はフィールドとは形も大きさも変えながら、やはり細やかに埋められた空間は中央と同じリズムを引き継ぎ、織り地全体がひとつの複雑なアラベスク模様でおおわれているように見えます。
この細かな文様は、１平方センチ辺り25目近くを数える精密な織りによって刻み出されています。細く強いコットンを狭く張り詰めたたて糸に細いウールの毛足をしっかりと織り詰め、腰のある毛並みをたたえています。斜め上を向いて立ち上がった毛足はよくほどけてなめらかに馴染みあい、モチーフの細い線や輪郭をくっきりと描き出しています。